高齢者は賃貸を借りにくい?審査の理由から契約のコツ、安心できる住まいの探し方まで解説
高齢者が賃貸を借りにくいのはなぜ?審査の理由と入居を成功させる 3 つのコツ

「年齢を重ねてからの住まい探しは、なにかと不安…」「高齢だと賃貸の審査に通りにくいって本当?」そんな疑問や心配を抱えていませんか。確かに、高齢者の賃貸契約は、若い世代に比べて少しハードルが高いと感じることがあるかもしれません。
しかし、その理由と対策をきちんと知っておけば、何も怖がることはありません。
この記事では、なぜ高齢者が賃貸を借りにくいと言われるのか、その背景から入居審査をスムーズに通過するための具体的な5つのコツ、そして心から安心して暮らせる物件の選び方まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。あなたの新しい住まい探しが、希望に満ちたものになるよう、全力でサポートします。
なぜ?大家さんが懸念する、高齢者が賃貸を借りにくい3つの理由

「高齢者」というだけで、なぜ入居を断られることがあるのでしょうか。それは、大家さんや管理会社がいくつかのリスクを心配しているからです。決して意地悪をしているわけではなく、大家さん側にも事情があるのです。ここでは、大家さんが抱える主な3つの懸念について、その背景をみていきましょう。理由を知ることで、効果的な対策を立てることができます。
家賃滞納への懸念(経済的な不安)
大家さんにとって最も大きな心配ごとの一つが、家賃の滞納です。現役世代の場合、安定した給与収入が見込めますが、高齢になると主な収入源が年金になる方が多いでしょう。
もちろん、計画的に生活されている方がほとんどですが、大家さん側から見ると「もし病気や介護で急な出費が増えたら、家賃の支払いが滞ってしまうのではないか」という経済的な不安を感じてしまうのです。安定した収入源を証明することが、この不安を解消するカギとなります。
健康状態の悪化リスク(心身の不安)
年齢を重ねると、誰しも体調の変化が起こりやすくなります。大家さんは、入居者の健康状態が悪化することへのリスクも考えています。
例えば、室内で転倒してしまったり、急な病気で入院が必要になったりするケースです。もし介護が必要になった場合、お部屋の使い方が変わったり、緊急時の対応が必要になったりすることも考えられます。こうした心身の変化に対する懸念が、入居審査を慎重にさせる一因となっているのです。
孤独死への不安と事後の対応
近年、社会的な問題としても注目されているのが「孤独死」です。もし室内で誰にも看取られずに亡くなられた場合、発見が遅れる可能性があります。
そうなると、大家さんは特殊清掃の手配や、次の入居者への告知義務など、心理的にも経済的にも大きな負担を背負うことになります。物件の価値が下がってしまうリスクもあるため、特に単身の高齢者の入居には、より慎重な判断をせざるを得ないというのが実情なのです。
高齢者が賃貸の入居審査を通過するための5つの方法
大家さんの懸念点がわかったところで、次は具体的な対策です。審査に対する不安を解消し、スムーズに契約を進めるための5つの方法をご紹介します。これらのポイントをしっかり押さえて準備すれば、審査通過の可能性は格段にアップします。前向きな気持ちで、できることから始めていきましょう。
支払い能力を具体的に示す
大家さんの経済的な不安を払拭するため、「家賃をきちんと支払い続けられますよ」ということを客観的なデータで示しましょう。口頭で説明するだけでなく、具体的な書類を準備することが重要です。
- 年金受給額がわかる書類(年金証書や振込通知書など)
- 預貯金通帳のコピー(十分な残高があることを示す)
- その他の収入を証明できる書類(不動産収入など)
これらの書類を提示することで、「安定した収入があり、万が一の時も安心です」という強いメッセージとなり、大家さんに安心感を与えることができます。
頼れる家族・親族の協力を得る
あなたのことをよく知る家族や親族の協力は、審査において非常に心強い味方になります。まずは、子どもや兄弟姉妹など、身近な人に賃貸探しをしていることを相談してみましょう。
入居申込書には「緊急連絡先」を記入する欄がありますが、可能であれば「連帯保証人」になってもらうと、さらに信頼性が高まります。特に、現役で働いている親族が連帯保証人になってくれると、大家さんは経済的なリスクが大幅に減ると感じ、審査に通りやすくなるでしょう。
連帯保証人の代わりとなる家賃保証会社を利用する
「家族に迷惑をかけたくない」「頼れる親族がいない」という方もご安心ください。最近では、連帯保証人の役割を代行してくれる「家賃保証会社」の利用が一般的になっています。
保証会社は、万が一家賃を滞納してしまった場合に、一時的に家賃を立て替えて大家さんに支払ってくれる会社です。利用するには審査と保証料(初期費用として家賃の0.5ヶ月〜1ヶ月分程度が目安)が必要ですが、連帯保証人がいなくても契約が可能になります。不動産会社で紹介してくれることがほとんどなので、気軽に相談してみましょう。
高齢者の入居を歓迎している物件を選ぶ
すべての大家さんが高齢者の入居に消極的なわけではありません。むしろ、長く安定して住んでくれることを期待し、「高齢者歓迎」としている物件もたくさんあります。
物件を探す際は、インターネットの検索サイトで「高齢者相談可」「シニア歓迎」といったキーワードで絞り込んだり、不動産会社の担当者に「高齢ですが、入居可能な物件を探しています」と正直に伝えたりすることが近道です。最初から理解のある物件を選ぶことで、審査もスムーズに進みやすくなります。
公的な支援制度やサービスを活用する
国や自治体も、高齢者の住まい探しをサポートする制度を用意しています。これらの公的な支援をうまく活用するのも一つの手です。
例えば、「住宅確保要配慮者居住支援協議会」という組織が各自治体にあり、高齢者などの住宅探しが難しい人々と、受け入れ可能な賃貸物件のマッチングを行っています。どこに相談すればよいかわからない場合は、まずはお住まいの市区町村の役所にある福祉課や住宅課の窓口で、利用できる制度がないか尋ねてみることをおすすめします。
高齢者が安心して暮らせる賃貸物件の選び方【7つのポイント】

無事に入居審査をクリアできたら、次はいよいよ物件選びです。長く快適に、そして安全に暮らすためには、若い頃とは少し違った視点で物件をチェックすることが大切になります。ここでは、高齢者の住まい選びで後悔しないための7つの重要なポイントを解説します。
【安全性】バリアフリー設計とセキュリティ対策
何よりも優先したいのが、日々の暮らしの安全性です。室内のちょっとした段差でのつまずきが、大きなケガにつながることもあります。
- 室内に段差がないか
- 廊下や浴室、トイレに手すりが設置されているか
- エレベーターはあるか(2階以上の部屋の場合)
また、オートロックやモニター付きインターホンなど、防犯面の設備が整っていると、より安心して生活できるでしょう。
【生活利便性】病院やスーパーなど周辺環境の充実度
車を手放したり、長距離の移動が難しくなったりすることも考えて、生活に必要な施設が徒歩圏内にあるかどうかを確認しましょう。
- かかりつけにできる病院やクリニック
- 日常の買い物ができるスーパーや商店街
- 郵便局や銀行、役所の支所
これらの施設が家の近くにそろっていると、日々の生活がぐっと楽になります。内見の際には、物件の周りを少し歩いてみるのがおすすめです。
【交通アクセス】公共交通機関の利用しやすさ
友人との集まりやちょっとしたお出かけなど、行動範囲を狭めないためにも、交通の便の良さは重要です。
最寄りの駅やバス停までの距離はどれくらいか、坂道はないか、バスや電車の本数は十分にあるかなどをチェックしておきましょう。タクシーが拾いやすい大通りに近いかどうかも、いざという時に役立つポイントです。
【経済性】無理なく支払い続けられる家賃か
新しい生活を始めるにあたり、経済的な計画は欠かせません。毎月の家賃が、年金などの収入に対して無理のない範囲に収まっているか、冷静に判断しましょう。
家賃だけでなく、管理費や共益費、駐車場代など、毎月かかる費用をすべて合計して考えることが大切です。少しでも不安があれば、家賃設定を下げて物件を探し直す勇気も必要です。
【社会的つながり】家族や友人との距離感
人とのつながりは、心豊かな生活を送る上で非常に大切です。新しい住まいが、子どもや孫、親しい友人が気軽に訪ねてこられる場所にあるかどうかも考えてみましょう。
あまりに離れた場所を選んでしまうと、お互いに行き来するのが難しくなり、孤立感を深めてしまう原因にもなりかねません。適度な距離感を保てる場所を選ぶことで、精神的な安心にもつながります。
【サポート】見守りサービスの有無
最近では、高齢者の安心な暮らしを支えるサービスが付いた賃貸物件も増えています。
例えば、安否確認をしてくれる「見守りサービス」や、体調が急変した際にボタン一つで通報できる「緊急通報システム」などです。こうしたサポートがあれば、本人だけでなく、離れて暮らす家族も安心できます。物件探しの際に、このようなサービスの有無を確認してみるのも良いでしょう。
【快適性】防音性や日当たり
毎日を過ごす場所だからこそ、快適さも追求したいポイントです。日当たりの良い部屋は、心も体も明るくしてくれます。特に、日中の多くの時間を家で過ごす場合は、日当たりの良さは重要です。
また、隣や上下の部屋からの生活音が気にならないか、壁の厚さなど防音性も確認しておくと、後々のトラブルを防げます。穏やかな毎日を送るために、こうした快適性もしっかりチェックしましょう。
一般的な賃貸が難しい場合の選択肢は?高齢者向け住まいの種類

さまざまな対策をしても、どうしても一般の賃貸住宅の契約が難しい場合もあります。しかし、落ち込む必要はありません。高齢者が安心して暮らせる住まいの選択肢は、他にもたくさん用意されています。ここでは代表的な4つの住まいの種類をご紹介します。
UR賃貸住宅・公営住宅
独立行政法人都市再生機構(UR)が管理する「UR賃貸住宅」や、都道府県・市区町村が運営する「公営住宅」は、高齢者にとって心強い選択肢です。
これらの住宅は、礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要という大きなメリットがあります。入居には収入などの条件や抽選がある場合もありますが、初期費用や更新時の負担を大幅に抑えられるため、ぜひ検討してみてください。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
「サ高住」は、安否確認サービスや生活相談サービスが付いた、高齢者向けの賃貸住宅です。
バリアフリー設計が基本で、自立した生活を送りながらも、何かあった時の安心感が得られます。食事の提供や介護サービスを併設している施設もあり、将来的な心身の変化にも対応しやすいのが特徴です。自分のライフスタイルに合わせて、必要なサービスを選べる点が魅力と言えるでしょう。
セーフティネット住宅
「セーフティネット住宅」とは、高齢者や障がい者、子育て世帯など、住宅の確保が難しい方々の入居を拒まない賃貸住宅として、国に登録された物件のことです。
一般的な賃貸住宅と変わりませんが、大家さんは高齢者の入居に理解があるため、審査のハードルが低い傾向にあります。専用の検索サイトで全国の物件を探すことができるので、一度チェックしてみる価値は十分にあります。
シニア向け分譲マンション・住宅型有料老人ホーム
より充実したサービスや設備、コミュニティを求める方には、「シニア向け分譲マンション」や「住宅型有料老人ホーム」という選択肢もあります。
これらは賃貸ではなく購入や利用権契約が主で、費用は高めになりますが、レストランや大浴場、趣味を楽しむ共用スペースが充実しているなど、ホテルライクな暮らしが送れる場合もあります。将来の介護への備えもしっかりしている施設が多く、終の棲家として選ぶ方も増えています。
高齢者の賃貸契約に関するよくある質問
ここでは、高齢者の賃貸契約に関して多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式でお答えします。細かい不安を一つひとつ解消していきましょう。
賃貸契約に年齢制限はある?何歳まで借りられる?
A. 法律上、賃貸契約に「〇歳まで」という年齢制限は設けられていません。何歳であっても、契約を結ぶ権利はあります。
ただし、現実的には、これまで解説してきたような大家さんの懸念から、年齢が上がるにつれて入居審査が慎重になる傾向はあります。しかし、支払い能力を証明したり、保証会社を利用したりといった対策をきちんと行えば、80代や90代の方でも賃貸契約を結ぶことは十分に可能です。年齢を理由にあきらめる必要は全くありません。
身寄りがなくても契約は可能?
A. はい、可能です。身寄りがない(頼れる親族がいない)場合、緊急連絡先や連帯保証人の確保が課題になります。
この場合、家賃保証会社の利用が最も一般的な解決策です。さらに、自治体の社会福祉協議会やNPO法人などが提供している「身元保証サービス」を利用する方法もあります。これは、連帯保証や緊急時の対応、亡くなった後の手続きなどを代行してくれるサービスです。費用はかかりますが、大きな安心材料となります。
今住んでいる賃貸から追い出されることはありますか?
A. 正当な理由なく、大家さんから一方的に退去を求められることはありませんので、ご安心ください。
日本の法律(借地借家法)では、入居者の権利は強く保護されています。大家さんが契約の更新を断ったり、退去を求めたりするには、「建物の老朽化による建て替え」など、よほどの正当な事由が必要です。単に「高齢になったから」という理由だけでは、追い出されることはありません。ただし、家賃の長期滞納や、他の入居者に著しく迷惑をかける行為は、契約解除の正当な理由となりますので注意しましょう。
まとめ:事前の準備と情報収集で、高齢者も安心して住める賃貸を見つけよう
高齢者の賃貸探しは、「借りにくい」というイメージから不安に感じてしまうかもしれません。しかし、大家さんが何を懸念しているのかを理解し、一つひとつ丁寧に対策をすれば、道は必ず開けます。
大切なのは、「支払い能力をきちんと示すこと」「協力してくれる人やサービスを見つけること」「最初から高齢者に理解のある物件を選ぶこと」の3点です。そして、入居審査のことだけでなく、その先にある「安全で快適な暮らし」を具体的にイメージしながら物件を選ぶ視点も忘れないでください。
現代には、UR賃貸やサ高住といった多様な選択肢があり、公的なサポートも充実しています。一人で悩まず、家族や不動産会社、自治体の窓口などに積極的に相談しましょう。事前の準備と正しい情報収集が、あなたにぴったりの、心から安心して暮らせる素敵な住まいを見つけるための何よりの力になります。