老後の住まい、どうする?【持ち家vs賃貸】メリット・デメリットから最適な選択肢まで徹底解説
老後の住まいはどう選ぶ?後悔しないための選択肢と判断ポイントを解説

定年退職を迎え、子育てもひと段落。これからの人生を考えたとき、「住まいをどうするか」は誰もが向き合う大きなテーマではないでしょうか。長年住み慣れた我が家も、階段の上り下りが大変になったり、夫婦二人では広すぎると感じたり…。かといって、今から新しい場所に住み替えるのも不安が大きいですよね。
この記事では、そんな悩みを抱えるあなたのために、老後の住まい選びの選択肢をわかりやすく整理しました。持ち家に住み続ける場合、賃貸に住み替える場合、それぞれのメリット・デメリットから、自分にぴったりの選択肢を見つけるための判断ポイントまで、具体的にお伝えします。この記事を読めば、漠然とした不安が解消され、これからの暮らしを前向きに考えるきっかけになるはずです。
まずは現状を知ろう!データで見るシニア世代の住まいの実態
「他の人はどうしているんだろう?」と、周りの状況は気になるものですよね。まずは、今のシニア世代がどのような住まいで暮らしているのか、データを見てみましょう。客観的な事実を知ることで、ご自身の状況を整理しやすくなります。
多くのシニアは「持ち家」に住み続けている
内閣府の調査によると、60歳以上の約8割が「持ち家(一戸建て・マンション)」に住んでいます。この数字を見ると、やはり多くの方が長年暮らした愛着のある家で、そのまま老後を過ごしていることがわかります。住み慣れた環境やご近所付き合いを変えたくない、という気持ちはとても自然なことでしょう。思い出の詰まった我が家で暮らし続けることは、大きな安心感につながります。
理想は「コンパクトで利便性が良く、資金に余裕が持てる住まい」
一方で、理想の住まいについての調査を見ると、少し違う一面が見えてきます。「将来住み替えたい家」として人気なのは、「生活や交通が便利なまちなかのマンション」や「管理が楽なコンパクトな平屋」などです。今の家に不満はないけれど、本音を言えば「もっと暮らしやすく、お金の心配も少ない住まい」を求めている方が多いようです。現状と理想のギャップこそが、多くの人を悩ませる原因なのかもしれません。
老後の住まいは「住み続ける」or「住み替える」?

老後の住まいの選択肢は、突き詰めると非常にシンプルです。それは、「今の家に住み続ける」か、「新しい場所に住み替える」かの2つ。どちらが良い・悪いということではなく、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
まずは両方をしっかり比較して、ご自身の考えに近いのはどちらかを探ってみましょう。
【選択肢1】今の家に住み続けるメリット・デメリット
長年暮らしてきた我が家に住み続けるのは、最もイメージしやすい選択肢です。環境の変化によるストレスがなく、精神的な安定を得やすいのが最大の魅力でしょう。
- メリット
- 住み慣れた環境で安心して暮らせる
- ご近所付き合いや地域のコミュニティを維持できる
- 住宅ローンが終わっていれば、住居費を抑えられる
- デメリット
- 建物の老朽化による修繕費や維持費がかかる
- 階段や段差など、身体が衰えると暮らしにくくなる可能性がある
- 子どもが独立すると、夫婦二人には広すぎて管理が大変になる
【選択肢2】住み替えるメリット・デメリット
思い切って住み替えるという選択は、老後の生活をよりアクティブで快適なものに変えるチャンスを秘めています。心機一転、新しい生活をスタートさせることができます。
- メリット
- 生活スタイルに合った広さや間取りの家に住める
- 病院やスーパーが近い、交通の便が良い場所を選べる
- バリアフリーの物件なら、将来の介護にも備えやすい
- デメリット
- 引っ越し費用や新しい家の購入・契約費用がかかる
- 新しい環境や人間関係に慣れるまで時間がかかる
- 希望の物件がすぐに見つかるとは限らない
【今の家に住む場合】快適な暮らしを維持するためのポイント
「やっぱり今の家がいい」と決めた場合でも、ただ何となく住み続けるだけでは将来後悔するかもしれません。これから先も安全で快適に暮らすために、考えておきたい2つのポイントをご紹介します。早めに準備を始めることが大切です。
バリアフリー化など将来を見据えたリフォームを検討する
今は元気でも、10年後、20年後はどうなっているかわかりません。将来、車椅子での生活になったり、足腰が弱くなったりすることも考えて、家の中を安全な環境に整えておきましょう。
- 手すりの設置: 廊下、階段、トイレ、お風呂場など
- 段差の解消: 部屋の入り口や玄関の段差をなくす
- 和室を洋室に: 畳での立ち座りが大変になった場合に備える
- 浴室の改善: 滑りにくい床材に変えたり、ヒートショック対策をしたりする
これらのリフォームには、介護保険の住宅改修費や自治体の助成金が使える場合があります。お住まいの市区町村の窓口で一度相談してみることをおすすめします。
維持費や修繕費など、今後の資金計画を立てる
持ち家は家賃がかからない代わりに、さまざまな維持費が必要です。特に築年数が経つと、思わぬ出費が発生することもあります。安心して暮らし続けるために、今後どれくらいのお金が必要になるか、おおよその計画を立てておきましょう。
- 毎年かかる費用: 固定資産税、火災保険料、町内会費など
- 定期的に必要な費用(戸建て): 外壁や屋根の塗装(10~15年に一度)、給湯器の交換など
- 定期的に必要な費用(マンション): 管理費、修繕積立金
これらの費用をリストアップし、年金や貯蓄でまかなえるかを確認しておくことが、将来の安心につながります。
【住み替える場合】多様な選択肢とそれぞれの特徴を徹底比較
「住み替える」と一言でいっても、その選択肢はさまざまです。賃貸住宅でのびのび暮らすのか、それとも新しい持ち家で心機一転スタートするのか。それぞれの特徴と注意点を詳しく見ていきましょう。
賃貸住宅への住み替え
賃貸住宅への住み替えは、ライフステージの変化に合わせやすい身軽さが魅力です。固定資産税や修繕費の心配がなく、設備の故障も大家さんや管理会社が対応してくれるため、家の管理に手間をかけたくない方に向いています。
一般的な賃貸物件の注意点(入居審査など)
一般的な賃貸物件を探す際に、高齢者という理由で入居審査が厳しくなるケースがあるのは事実です。これは、家賃滞納や孤独死といったリスクを大家さんが懸念するためです。保証人が見つかりにくいという問題もありますので、覚えておきましょう。
高齢者向け賃貸住宅(サ高住・UR賃貸など)という選択肢
しかし、心配はいりません。高齢者が安心して暮らせる賃貸住宅も増えています。例えば、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、安否確認や生活相談サービスが受けられます。「UR賃貸住宅」は、礼金・仲介手数料・更新料・保証人が不要な物件が多く、高齢者でも申し込みやすいのが特徴です。
新たな持ち家(分譲住宅)への住み替え
現在の家を売却した資金で、新しい家を購入するのも一つの方法です。終の棲家として、自分たちの理想に合った家を手に入れることができます。売却と購入のタイミングをうまく合わせる必要があり、不動産会社との連携が重要になります。
コンパクトなマンションや平屋が人気
老後の住み替えで特に人気が高いのは、管理が楽なコンパクトなマンションや、階段のない平屋です。掃除の手間が省け、光熱費も抑えられるため、夫婦二人の暮らしにぴったり。セキュリティがしっかりしたマンションや、庭いじりが楽しめる小さな庭付きの平屋など、自分たちの理想のライフスタイルに合わせて選べます。
資金計画と住宅ローンの注意点
高齢になると、住宅ローンの審査は非常に厳しくなります。そのため、多くの方は現在の家を売却した資金で、現金購入するケースがほとんどです。売却価格が想定より低かったり、購入したい物件が高かったりすると、資金計画が狂ってしまいます。焦らず慎重に進めることが何よりも大切です。
後悔しないために!快適な老後の住まいを選ぶための4つの判断基準

ここまで選択肢を見てきましたが、「結局、自分たちはどうすればいいの?」と迷ってしまいますよね。そこで、ご自身に最適な住まいを選ぶための判断基準を4つの視点からご紹介します。これらを一つずつチェックすることで、考えが整理されていくはずです。
経済状況:今後の収入と支出をシミュレーションする
まずは「お金」の問題です。今後の生活を具体的にイメージしてみましょう。
- 収入: 年金は毎月いくらもらえるか? 退職金はいくらか?
- 支出: 住居費以外に、食費、光熱費、医療費、交際費はどれくらいか?
- 貯蓄: いざという時のために、いくら手元に残しておきたいか?
持ち家に住み続ける場合の維持費と、住み替える場合の費用を比較して、どちらが無理のない計画かを考えてみることが重要です。
健康状態:将来的な介護の必要性も考慮に入れる
次に「健康」の視点です。今の元気な状態だけでなく、10年後、20年後のことも考えてみてください。
- 通院のしやすさ: かかりつけの病院へのアクセスは良いか?
- 家の安全性: 階段や段差は、将来的に負担にならないか?
- 介護の可能性: もし介護が必要になったら、今の家でサービスを受けられるか? 家族は通いやすいか?
将来、身体が不自由になる可能性も視野に入れ、安全で暮らしやすい環境かどうかを判断しましょう。
ライフスタイル:趣味や人付き合い、働き方を考える
あなたが「どんな暮らしを送りたいか」という視点も非常に大切です。
- 趣味: 庭いじりを続けたいか? 地域のサークル活動に参加したいか?
- 交通手段: 車の運転をいつまで続けるか? 車がなくても生活できる場所か?
- 人付き合い: 友人や子ども、孫とどのくらいの頻度で会いたいか?
理想の暮らし方を思い描き、それを実現できる住まいはどちらかを考えてみましょう。
家の状態:戸建てかマンションか、老朽化の度合いを確認する
最後に、今お住まいの「家そのもの」の状態を客観的にチェックします。
- 築年数: あと何年くらい安心して住めそうか?
- 老朽化: 雨漏りやシロアリなど、大きな修繕が必要な箇所はないか?
- 耐震性: 大きな地震が来ても大丈夫か?
- 住環境(マンションの場合): 管理組合はしっかり機能しているか? 修繕積立金は不足していないか?
専門家による住宅診断(ホームインスペクション)を受けてみるのも一つの手です。
老後の住まいで忘れてはいけない「家族への影響」という視点

住まいの問題は、ご夫婦だけの問題ではありません。子どもたちにも大きく関わってきます。
例えば、もし親が亡くなった後、誰も住まなくなった実家は「空き家」となり、管理や固定資産税が子どもたちの負担になる可能性があります。また、将来介護が必要になったとき、子どもたちが通いやすい場所に住んでいるかどうかも重要です。自分たちの希望だけで決めてしまうのではなく、「子どもたちに迷惑をかけたくない」という視点も大切にしてください。この機会に一度、これからの住まいについて家族で話し合ってみることを強くおすすめします。
まとめ:最適な老後の住まいを見つけるために、早めの準備を始めよう
老後の住まい選びについて、「持ち家継続」と「住み替え」という2つの大きな選択肢を中心に解説してきました。どちらにもメリット・デメリットがあり、「これが唯一の正解」というものはありません。大切なのは、ご自身の経済状況、健康状態、そして理想のライフスタイルと向き合い、ご家族ともよく相談した上で、納得のいく答えを見つけることです。
一番の後悔は、「もっと早く考えておけばよかった」となること。まだ元気で、判断力もしっかりしている今のうちから、情報収集を始め、準備を進めておくことが何よりも重要です。この記事が、あなたの輝くセカンドライフの第一歩を踏み出すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。