一人暮らしの親に家族がしてあげられることは？見守り方や施設選びを解説

ふとした瞬間に、遠くで一人暮らす親のことが頭をよぎる。「元気にしているだろうか」「何か困ったことはないかな…」。そんな漠然とした不安を感じていませんか？

親を大切に思うからこその心配ですが、何から手をつければ良いのか分からず、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。この記事では、そんなあなたの悩みに寄り添い、具体的な解決策を分かりやすく解説します。

親の現状を正しく把握する方法から、今すぐ始められるサポート、さらには同居や施設入居といった将来の選択肢まで。この記事を読み終える頃には、あなたの不安が「次の一歩」へと変わっているはずです。

まずは現状把握から。一人暮らしの高齢者が増えている社会背景

「親の一人暮らしが心配」という悩みは、決してあなただけのものではありません。今の日本では、65歳以上の方が一人で暮らすケースがどんどん増えています。2020年の調査では、65歳以上の約5人に1人が一人暮らしというデータもあるほどです。

核家族化が進み、子どもが親と離れて暮らすのが当たり前になりました。また、医療の進歩で平均寿命が延びたことも、高齢者の一人暮らしが増えている大きな理由です。これは社会の変化であり、誰にでも起こりうること。だからこそ、早めに正しい知識を身につけ、親子で将来について考える時間が大切になっているのです。

高齢の親の一人暮らし、何が危ない？潜むリスクを徹底解説

元気そうに見えても、高齢の親の一人暮らしには様々なリスクが隠れています。具体的にどんな危険があるのかを知ることで、的確な対策を立てることができます。ここでは、特に注意したい4つの側面からリスクを詳しく見ていきましょう。

【健康面】急な病気やケガ、服薬・栄養管理の不安

高齢になると、若い頃には考えられなかったような健康リスクが高まります。

• 突然の体調不良：脳卒中や心筋梗塞など、一刻を争う病気で倒れても、誰にも気づいてもらえない可能性があります。
• 転倒によるケガ：少しの段差でつまずいて転倒し、骨折してしまうことも。動けなくなると、助けを呼ぶことさえ難しくなります。
• 薬の飲み忘れ：複数の薬を飲んでいると、飲み忘れたり、間違った量を飲んでしまったりする危険があります。
• 栄養の偏り：食事の準備が面倒になり、簡単なもので済ませてしまうと栄養が偏り、体力が低下する原因にもなります。

【生活面】火の不始末や家事負担の増大、認知機能の低下

毎日あたりまえに送っていた生活の中にも、少しずつ危険が忍び寄ります。

例えば、鍋を火にかけたまま忘れてしまうといった「火の不始末」は、火事につながる重大な事故の原因です。また、掃除や買い物といった日々の家事がだんだんと大きな負担になり、家の中が不衛生になってしまうことも。

さらに心配なのが、認知機能の低下です。初期の段階では「物忘れが増えたかな？」という程度でも、進行すると日常生活に支障をきたすようになります。こうした変化に家族が早く気づいてあげることが重要です。

【防犯・社会面】詐欺や悪質商法、近隣トラブル

高齢者を狙った犯罪は後を絶ちません。「自分は大丈夫」と思っていても、巧みな話術で高額な商品を売りつけられたり、振り込め詐欺の被害に遭ったりするケースは多いです。

判断力が少しずつ低下してくるため、悪質なセールスを断りきれないこともあります。また、耳が遠くなることでテレビの音量が大きくなりすぎたり、ゴミ出しのルールを守れなくなったりして、ご近所との思わぬトラブルに発展する可能性も否定できません。社会との接点が減ることで、こうした問題が起きやすくなります。

【精神面】社会的な孤立や孤独感

一人暮らしで最もつらいことの一つが「孤独」です。話し相手がいない毎日は、想像以上に心に大きな影響を与えます。

退職や配偶者との死別などをきっかけに、社会とのつながりが急に減ってしまうことがあります。近所付き合いも少なくなると、人と話す機会がなくなり、家に閉じこもりがちに。こうした孤立は、うつ病や認知症の進行につながることもあるため、心のケアは非常に大切です。親が寂しさを感じていないか、気にかけてあげることが求められます。

一人暮らしの親のために、今すぐ始められる4つのサポート

「何かしてあげたい」と思っても、親のプライドを傷つけたり、おせっかいだと思われたりしないか心配ですよね。大切なのは、親の「まだ自分でできる」という気持ちを尊重すること。

ここでは、親子関係を良好に保ちながら、今日からでも始められるサポートをご紹介します。

定期的なコミュニケーションで心と体の変化を察知する

最も簡単で、最も重要なサポートが「こまめな連絡」です。

• 電話やビデオ通話：週に1〜2回など、曜日や時間を決めて電話する習慣をつけましょう。声の調子や会話の内容から、体調の変化に気づけることもあります。
• 「変わりない？」以外の質問：「昨日の晩ごはんは何食べた？」「今日はおもしろいテレビあった？」など、具体的な質問を投げかけると、日々の暮らしぶりや記憶力の状態が見えてきます。
• 帰省した際のチェックポイント：帰省したときは、冷蔵庫の中身や部屋の片付き具合、郵便物のたまり具合などをさりげなくチェックしてみてください。

実家の環境を整備して事故を未然に防ぐ

家の中のちょっとした工夫で、ケガのリスクを大きく減らすことができます。親が「まだ大丈夫」と言っても、転ばぬ先の杖として安全な環境を整えてあげましょう。

• 手すりの設置：お風呂場やトイレ、廊下、玄関など、立ち座りや移動が多い場所に手すりを取り付ける。
• 段差の解消：部屋の敷居など、小さな段差につまずき防止のスロープを設置する。
• 照明の確保：夜中にトイレへ行くときのために、廊下に足元を照らすセンサーライトを置く。
• 火災対策：ガスコンロを、火を使わないIHクッキングヒーターに交換する。

外部のサービスを上手に活用して負担を減らす

すべてを家族だけで抱え込む必要はありません。世の中には、高齢者の暮らしを助けてくれる便利なサービスがたくさんあります。

• 配食サービス：栄養バランスの取れた食事を毎日届けてもらえます。安否確認を兼ねてくれるサービスも人気です。
• 家事代行サービス：掃除や買い物など、負担の大きい家事をプロにお願いできます。
• 見守りサービス：ポットの使用状況やドアの開閉センサーで、離れていても暮らしぶりを確認できるサービスです。何かあったときには警備会社が駆けつけてくれます。

近所付き合いや親族との連携を密にする

あなた一人で親を支えるのは大変です。周りの人たちの力を借りることも考えましょう。

帰省した際には、いつも親がお世話になっているご近所の方に「母をよろしくお願いします」と挨拶をしておくだけでも、いざという時に気にかけてもらいやすくなります。

また、兄弟姉妹がいる場合は、親の状況や今後のことについて、日頃から情報を共有しておくことが大切です。誰か一人に負担が偏らないよう、役割分担などを話し合っておくと、いざという時にスムーズに動けます。

親と「同居」か「近居」か？家族の新しい暮らし方を考える

見守りだけでは心配が尽きない場合、次のステップとして「同居」や「近居」を考える方も多いでしょう。どちらの選択にも良い点と注意すべき点があります。家族みんなが納得できる形を見つけるために、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

「同居」のメリットと、気をつけたい注意点

同居の最大のメリットは、親のそばに常に誰かがいるという安心感です。急な体調の変化にもすぐに対応でき、日々の見守りがしやすくなります。経済的にも、家賃や光熱費などをまとめられるため、負担が減る場合があります。

しかし、注意点もあります。生活リズムや価値観の違いから、お互いにストレスを感じてしまうことも。プライバシーの確保が難しくなったり、介護の負担が特定の人に集中してしまったりする可能性も考えておく必要があります。

お互いの生活を尊重できる「近居」という選択肢

「近居」は、親子がすぐに行き来できる距離に住む暮らし方です。スープの冷めない距離、などと言われますね。

近居のメリットは、お互いのプライバシーや生活スタイルを保ちながら、必要なときにはすぐに駆けつけられる点です。同居ほどの気遣いは不要で、ほどよい距離感を保てます。

デメリットとしては、家が二つになるため、家賃などの住居費がかかることが挙げられます。また、自治体によっては近居を支援する補助金制度がある場合もあるので、調べてみると良いでしょう。

親との同居・近居が難しいなら。高齢者向け住宅・施設の種類と選び方

仕事の都合や家庭の事情で、同居や近居が難しい場合も多いはずです。そんなときは、プロのサポートが受けられる高齢者向けの住まいを検討するのも一つの有効な選択肢。たくさんの種類がありますが、ここでは代表的な3つの施設について解説します。

タイプ別に解説！高齢者向け住宅・施設一覧

施設と聞くと少し寂しいイメージを持つかもしれませんが、最近ではホテルのような快適な空間や、入居者同士の交流が盛んな場所も増えています。親の心身の状態や希望に合わせて、最適な住まいを選びましょう。

サービス付き高齢者向け住宅（サ高住）

比較的お元気な方向けの、バリアフリーが整った賃貸住宅です。安否確認や生活相談サービスが必ずついており、自由度の高い暮らしができます。介護が必要になった場合は、外部の介護サービスを利用するのが一般的です。自分のペースで生活したい親御さんに向いています。

住宅型有料老人ホーム

食事の提供や掃除・洗濯といった生活支援サービスが受けられる施設です。サ高住と同じく、介護が必要な場合は外部のサービスを利用します。レクリエーションなどが充実している施設も多く、他の入居者との交流を楽しみたい方におすすめです。

介護付き有料老人ホーム

要介護認定を受けた方が対象で、施設のスタッフから24時間体制で介護サービスを受けられるのが大きな特徴です。食事や入浴、排泄の介助まで、手厚いケアが受けられます。介護度が上がっても住み続けられる安心感があります。

気になる費用はどれくらい？入居にかかるお金の目安

施設への入居には、大きく分けて2種類のお金がかかります。

1. 入居一時金：入居時に支払うまとまったお金です。施設によって0円のところから、数千万円以上するところまで様々です。
2. 月額利用料：家賃や管理費、食費、水道光熱費など、毎月支払う費用です。施設の設備やサービス内容、介護度によって金額は変わります。

一般的に、公的な施設は費用が安めですが入居待機者が多い傾向に。民間の施設は費用が高めですが、サービスが手厚く、すぐに入居できることが多いです。

親に納得してもらうには？上手な伝え方と説得のコツ

親にとって、長年住み慣れた家を離れるのは非常に大きな決断です。子どもの意見を一方的に押し付けるのではなく、親の気持ちに寄り添い、丁寧に進めることが何よりも大切です。

• 「あなたのため」ではなく「私たちの安心のため」と伝える：「お父さん（お母さん）が心配で、仕事に集中できないんだ」など、子ども側の気持ちを主語にして伝えると、受け入れてもらいやすくなります。
• 本人の意思を尊重する：まずは「どうしたいか」を親自身に考えてもらう時間を作りましょう。
• 一緒に見学に行く：パンフレットだけでは伝わりません。楽しそうな施設をいくつかピックアップし、「一度見に行くだけでもどうかな？」と誘ってみましょう。施設の明るい雰囲気や楽しそうな入居者の様子を見れば、イメージが変わるかもしれません。

親が家を離れたら…「実家」の今後も考えておこう

親が施設に入居したり、同居を始めたりすると、これまで住んでいた「実家」が空き家になります。実は、この実家の問題も見過ごせません。親の暮らしのめどが立ったら、少し落ち着いて実家の今後についても考えておきましょう。

空き家を放置すると思わぬトラブルに

空き家をそのままにしておくと、様々な問題が起こる可能性があります。

• 建物の老朽化：誰も住まないと、家は驚くほど早く傷みます。
• 防犯上のリスク：放火や不法侵入のターゲットになる危険性があります。
• 近隣への迷惑：庭の草木が伸び放題になったり、害虫が発生したりして、ご近所から苦情が来ることも。
• 税金の負担：誰も住んでいなくても、固定資産税は毎年かかり続けます。

これらのリスクを避けるためにも、早めの対策が必要です。

売却や賃貸など、実家の賢い活用方法

実家の活用方法には、いくつかの選択肢があります。

• 売却する：家を売って現金化する方法です。まとまったお金ができるため、親の施設の費用や介護費用に充てることができます。
• 賃貸に出す：誰かに貸して、毎月家賃収入を得る方法です。安定した収入が見込めますが、管理の手間や空室のリスクも考慮する必要があります。
• リフォームして住む：子ども世帯が実家をリフォームして住む、という選択肢もあります。

どの方法がベストかは、家の状態や立地、家族の状況によって異なります。まずは不動産会社などに相談し、実家の価値を査定してもらうことから始めると良いでしょう。

まとめ：一人で抱え込まず、専門家への相談も視野に

一人暮らしの親を心配する気持ちは、とても自然なことです。しかし、その不安をあなた一人で抱え込む必要はありません。

まずは、できることから少しずつ始めてみましょう。こまめに電話を一本かけるだけでも、親にとっては大きな安心につながります。そして、兄弟姉妹や親族と協力し、外部のサービスや専門家の力も積極的に借りてください。

もし、介護の方法や施設選びなどで具体的に困ったことがあれば、「地域包括支援センター」に相談するのがおすすめです。ここは、高齢者の暮らしに関する総合相談窓口で、保健師や社会福祉士などの専門家が無料で相談に乗ってくれます。

親を想うあなたの気持ちが、きっと良い未来につながります。焦らず、一歩ずつ進んでいきましょう。