サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは?入居条件や費用、有料老人ホームとの違いをわかりやすく解説
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の基礎知識|入居条件・費用・有料老人ホームとの違いを教えます

「親の今後の暮らし、どうしよう…」「一人での生活に、少しだけ不安を感じるようになってきた」。そんな風に感じていませんか?
高齢期の住まいには様々な選択肢がありますが、中でも注目を集めているのが「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」です。
この記事では、サ高住がどんな場所なのか、有料老人ホームとは何が違うのか、費用はどのくらいかかるのかといった基本的な疑問に、どこよりも分かりやすくお答えします。
あなたの、そして大切なご家族の、これからの暮らしを考えるヒントがきっと見つかりますよ。
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)とは、高齢者の安心な暮らしを支える「賃貸住宅」
サ高住(さこうじゅう)とは、ひとことで言うと「高齢者向けの設備が整った、見守りサービス付きの賃貸住宅」です。
介護施設というよりは、バリアフリーが完備されたアパートやマンションをイメージすると分かりやすいでしょう。安否確認などの基本的なサービスを受けながら、自宅と同じように自由な生活を送れるのが大きな特徴です。介護が必要になった場合も、外部のサービスを利用しながら住み続けられる施設が多くあります。
基本サービスは「安否確認」と「生活相談」
サ高住には、法律で提供が義務付けられている2つの基本サービスがあります。それが「安否確認」と「生活相談」です。
スタッフが定期的にお部屋を訪問したり、緊急通報システムで見守ったりしてくれるので、万が一の時も安心です。また、暮らしの中でのちょっとした困りごとや不安を、専門の相談員にいつでも気軽に話せる体制が整っています。サ高住は、安心して自分らしい生活を続けられる点が大きな魅力です。
サービス内容で分かれる「一般型」と「介護型」の2種類
サ高住には、大きく分けて「一般型」と「介護型」の2つのタイプがあります。心身の状態や、将来どんな暮らしをしたいかに合わせて選ぶことが大切です。
それぞれの特徴をご紹介しますので、どちらが自分に合うかチェックしてみてくださいね。
一般型:自由な生活を送りやすいタイプ
多くのサ高住が「一般型」のタイプにあたります。
食事や介護などのサービスから、必要なものを自分で選んで外部の事業者と契約するスタイルです。そのため、外出や外泊、自炊なども自由にでき、これまでのライフスタイルを大きく変えることなく暮らせるのが魅力です。まだまだお元気で、アクティブに過ごしたい方におすすめです。
介護型:手厚い介護サービスが受けられるタイプ
「介護型」は、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたサ高住です。
このタイプでは、施設のスタッフが食事や入浴の介助といった介護サービスを直接提供してくれます。介護サービスがパッケージになっているため、要介護度が高くなっても安心して暮らせるのが特徴です。
24時間スタッフが常駐している施設も多く、手厚いサポートを求める方に適しています。
【徹底比較】サ高住と他の高齢者向け施設との違い
高齢者向けの住まいには、サ高住の他にも「有料老人ホーム」や「シニア向け分譲マンション」などがあります。名前が似ていて混乱しやすいですが、契約形態やサービス内容に大きな違いがあります。
それぞれの特徴をしっかり理解して、ご自身に合った住まいを選びましょう。ここでは、代表的な施設との違いを分かりやすく解説します。
有料老人ホームとの違いは契約形態とサービスの自由度
有料老人ホームとの一番の違いは、契約のかたちです。
サ高住が一般的なアパートと同じ「賃貸借契約」を結ぶのに対し、有料老人ホームは介護サービスなどを含めた施設全体の利用権を得る「利用権契約」が主流です。
そのため、サ高住は必要なサービスを自分で選べる自由度の高さが魅力ですが、有料老人ホームは手厚い介護がパッケージ化されている安心感が特徴と言えるでしょう。
シニア向け分譲マンションとの違いは所有権の有無
シニア向け分譲マンションは、その名の通り「購入」して自分の資産(所有権)となる住まいです。一方、サ高住はあくまで「賃貸」なので、所有権はありません。
マンションは資産として残せるメリットがありますが、購入費用が高額になりがちです。サ高住は賃貸のため初期費用を抑えやすく、住み替えがしやすいという手軽さがあります。まさに「買うか、借りるか」の違いと言えます。
サ高住に入居するための基本情報
サ高住の入居条件や費用について具体的に知りたい方も多いでしょう。ここでは、入居の際に必ず確認しておきたい基本情報をまとめました。施設によって細かいルールは異なりますが、一般的な目安として参考にしてみてください。安心して新しい生活をスタートするために、しっかりチェックしておきましょう。
入居条件|年齢や要介護度は?夫婦でも入居できる?
原則として「60歳以上の方」が入居対象となります。または、要介護認定を受けている60歳未満の方も入居できる場合があります。多くの施設では、自分で身の回りのことができる「自立」の方から、少し手助けが必要な「要支援」「要介護度が低い」方までを対象としています。もちろん、ご夫婦での入居も可能です。二人で入居できる広いお部屋を用意している施設もたくさんあります。
費用の内訳と相場|初期費用と月額料金はいくら?
サ高住にかかる費用は、大きく分けて「初期費用」と「月額利用料」の2つです。有料老人ホームのような高額な入居一時金は必要ないケースがほとんどで、一般的な賃貸住宅に近い費用感をイメージすると良いでしょう。ただし、施設の立地や設備、サービス内容によって金額は大きく異なりますので、あくまで目安としてお考えください。
初期費用:敷金が中心
初期費用は、主に「敷金」です。これは一般的な賃貸住宅と同じで、家賃の2~3ヶ月分が相場となっています。退去時には、お部屋の原状回復費用などを差し引いて返還されます。
施設によっては、敷金が不要な場合や、礼金・仲介手数料が必要な場合もあるので、契約前によく確認しましょう。
月額利用料:家賃・共益費・基本サービス費など
毎月支払う費用は、主に以下の項目で構成されています。
家賃:お部屋の賃料です。
共益費(管理費):共用部分の維持管理費です。
基本サービス費:安否確認と生活相談サービスの費用です。
その他:食費や、追加で利用する介護・生活支援サービスの費用などがかかります。
これらの合計で、月額10万円~30万円程度が一般的な相場です。
契約形態は2種類|「建物賃貸借」と「終身建物賃貸借」
サ高住の契約形態には、主に2つの種類があります。「建物賃貸借契約」は、一般的な賃貸住宅と同じ契約です。
契約者が亡くなった場合、契約は相続人に引き継がれます。一方、「終身建物賃貸借契約」は、契約者が亡くなった時点で契約が終了する特別な契約です。
これにより、身寄りのない方でも安心して生涯住み続けることができます。
サ高住で受けられるサービス内容の詳細

サ高住の魅力は、自分に必要なサービスを自由に組み合わせられる点です。すべての入居者が利用する「基本サービス」と、希望に応じて追加できる「選択サービス」があります。
ここでは、具体的にどのようなサービスを受けられるのかを詳しく見ていきましょう。ご自身の生活スタイルを想像しながら、どんなサービスが必要か考えてみてください。
必須で提供される基本サービス
法律により、サ高住では「安否確認」と「生活相談」の2つのサービスを提供することが義務付けられています。スタッフによる定期的な声かけや、緊急通報ボタンによる24時間の見守り体制が整っているため、一人暮らしの不安を解消してくれます。また、暮らしの中での悩みや健康に関する相談も、専門のスタッフが親身に対応してくれるので心強いですよ。
施設によって異なる選択(オプション)サービス
基本サービスに加えて、より快適な生活を送るための様々な選択サービスが用意されています。これらは必要なものだけを選んで利用する仕組みで、費用は別途かかります。施設によって内容や料金は大きく異なるため、見学の際などにしっかり確認することが重要です。
食事サービス
多くの施設では、栄養バランスの考えられた食事を食堂で提供しています。もちろん、自室で自炊することも可能です。毎食利用する、夕食だけ利用するなど、自分のペースで選べるのが嬉しいポイント。体調に合わせた治療食や、きざみ食などに対応してくれる施設もあります。
介護・医療連携サービス
介護が必要になった場合は、外部の訪問介護事業所などと個別に契約して、ヘルパーさんに来てもらうのが一般的です。施設によっては、介護事業所が併設されている場合もあります。また、地域の医療機関と連携し、訪問診療や健康相談を受けられる体制を整えている施設も多く、持病がある方も安心です。
生活支援サービス(買い物代行・掃除など)
日々の暮らしをサポートしてくれるサービスも充実しています。「重いものを買うのが大変」「高いところの掃除が難しい」といった悩みに応え、買い物代行や居室の清掃、洗濯などを依頼できます。有料ではありますが、家事の負担を減らして、趣味の時間などを楽しむゆとりが生まれます。
看取りへの対応
終の棲家としてサ高住を考える方にとって、看取りに対応しているかは重要なポイントです。近年では、訪問看護ステーションなどと連携し、施設での看取りに積極的に対応するサ高住も増えてきています。ただし、すべての施設が対応しているわけではないため、入居前に必ず確認しておきましょう。
サ高住のメリット・デメリットを解説
どんな住まいにも、良い点と注意すべき点があります。サ高住が自分に本当に合っているのかを判断するために、メリットとデメリットの両方をしっかりと理解しておきましょう。良い面だけに目を向けるのではなく、デメリットも知った上で検討することが、後悔しない住まい選びのコツです。
サ高住に入居する3つのメリット
サ高住には、他の高齢者向け施設にはない魅力がたくさんあります。特に、自由で自立した生活を続けたいと考える方にとって、大きなメリットを感じられるでしょう。
生活の自由度が高い
最大のメリットは、何といっても生活の自由度の高さです。賃貸住宅なので、外出や外泊、ご家族や友人の訪問も基本的には自由です。食事の時間なども決められておらず、ご自身のペースで生活リズムを組み立てることができます。これまでの暮らしを大切にしたい方には最適な環境と言えるでしょう。
初期費用を抑えやすい
有料老人ホームのように、数百万円から数千万円といった高額な入居一時金が必要ない場合がほとんどです。敷金のみで入居できる施設が多いため、初期費用を大幅に抑えることができます。まとまった資金がなくても、比較的スムーズに住み替えを検討できるのは大きな魅力です。
自分に必要なサービスだけを選べる
介護サービスや生活支援サービスは、自分に必要なものを必要な分だけ、外部の事業者と契約して利用します。そのため、まだお元気な方はサービス費用をかけずに生活できますし、必要になったら柔軟に追加していくことが可能です。無駄な費用がかからず、合理的なプランを立てやすいのが特徴です。
知っておきたいサ高住の3つのデメリット
メリットの多いサ高住ですが、いくつか注意点もあります。入居してから「こんなはずではなかった」とならないように、デメリットもしっかりと把握しておきましょう。
要介護度が上がると住み続けられない場合がある
一般型のサ高住の場合、介護度が重くなったり、常時介護が必要な状態になったりすると、施設の対応が難しくなり、退去を求められる可能性があります。
終の棲家として考えている場合は、介護体制が手厚い「介護型」を選ぶか、看取りまで対応している施設かしっかり確認することが重要です。
介護サービスは別途契約が必要
介護が必要になった場合、自分で介護サービス事業者を探し、契約を結ぶ手間がかかります。ケアマネジャーに相談しながら進めることになりますが、施設がすべて手配してくれるわけではない点を理解しておく必要があります。どんなサービスをどのくらい使うのか、自分で考えて選択しなければなりません。
人員配置が手厚いとは限らない
サ高住はあくまで住宅であり、介護施設ではありません。そのため、介護保険で定められている有料老人ホームのような手厚い人員配置基準はありません。
夜間はスタッフが不在になる施設もあります。24時間体制での手厚い見守りや介護を希望する場合は、人員体制について事前にしっかり確認しましょう。
サ高住はこんな方におすすめ
ここまでご紹介した特徴やメリット・デメリットを踏まえると、サ高住は特に次のような方におすすめの住まいと言えます。ご自身の希望する暮らしと照らし合わせてみてください。
まだまだ元気で、自分のペースで自由に暮らしたい方
一人暮らしは続けたいが、万が一の時が少し心配な方
高額な入居一時金は避け、初期費用を抑えて住み替えたい方
人との交流は楽しみたいけれど、過度な干渉は望まない方
将来介護が必要になった時のために、早めに備えておきたい方
失敗しないためのサ高住選びから入居までの流れ

自分に合ったサ高住を見つけるためには、計画的にステップを踏んでいくことが大切です。焦らず、じっくりと情報を集めて比較検討しましょう。ここでは、情報収集から入居までの一般的な流れを4つのステップでご紹介します。
STEP1:情報収集と比較検討
まずは、インターネットや自治体の窓口、地域包括支援センターなどで、お住まいの地域のサ高住情報を集めましょう。
立地や費用、サービス内容など、自分がこだわりたい条件を整理し、いくつかの候補を絞り込んでいくと比較しやすくなります。ケアマネジャーに相談してみるのも良い方法です。
STEP2:施設見学・相談
気になる施設が見つかったら、必ず見学に行きましょう。資料だけでは分からない、施設の雰囲気やスタッフの対応、入居者の表情などを自分の目で確かめることが何よりも大切です。
食事の試食ができる場合もあります。疑問や不安な点は、この段階で遠慮なく質問して解消しておきましょう。
STEP3:申し込みと入居審査
入居したい施設が決まったら、入居申込書を提出します。その後、ご本人の心身の状態や、共同生活が可能かどうかなどを確認するための面談が行われます。
収入や身元保証人に関する審査もあります。必要な書類(健康診断書や所得証明書など)は、事前に確認して準備しておくとスムーズです。
STEP4:契約と入居
審査を通過したら、いよいよ契約です。「建物賃貸借契約」と「サービス利用契約」など、複数の契約を結ぶのが一般的です。
契約書の内容は非常に重要ですので、不明な点があれば必ず担当者に確認し、納得した上で署名・捺印しましょう。契約が完了すれば、入居日を決めて新しい生活のスタートです。
サ高住に関するよくある質問
ここでは、サ高住を検討する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
多くの方が抱く疑問だと思いますので、ぜひ参考にしてください。
要介護度が上がったら退去しなければいけませんか?
必ずしも退去しなければならないわけではありません。特に「介護型」のサ高住や、介護事業所が併設されている施設であれば、重度の要介護状態になっても住み続けられる場合が多いです。ただし、一般型の施設では対応が難しいケースもあります。入居前に、どの程度の介護状態まで対応可能かを確認しておくことが重要です。
認知症でも入居できますか?
認知症の症状の程度や、施設の受け入れ体制によって異なります。
共同生活に支障がない軽度の認知症であれば、入居できる場合が多いです。最近では、認知症ケアに力を入れているサ高住も増えています。
まずは正直に施設の担当者に相談し、受け入れが可能かどうかを確認してみましょう。
どういった場合に退去を求められますか?
主に以下のような場合に、退去を求められる可能性があります。
家賃や管理費などを長期間滞納した場合
他の入居者への迷惑行為など、共同生活のルールを守れない場合
心身の状態が変化し、施設で提供できるサービスの範囲を超えてしまった場合
基本的には、一般的な賃貸住宅のルールや、施設との契約内容に基づきます。
まとめ
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)は、高齢期を「自分らしく、自由に、そして安心して」暮らすための、新しい住まいの選択肢です。安否確認や生活相談といった基本的なサポートを受けながら、これまでのライフスタイルを維持できるのが最大の魅力と言えるでしょう。有料老人ホームとの違いや、メリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の希望する暮らしに合っているかどうかをじっくり見極めることが大切です。この記事が、あなたにとって最適な住まいを見つけるための一助となれば幸いです。まずは気になる施設の情報収集から始めてみませんか。