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認知症が一気に進む原因とは?家族が知っておきたいサインと対処法

認知症が一気に進む原因とは?家族が知っておきたいサインと対処法

「最近、なんだか父の様子がおかしい…」「急に物忘れがひどくなった気がする…」
大切なご家族の認知症の症状が、まるで階段を駆け下りるように一気に進んだと感じたら、大きな不安に襲われますよね。しかし、その急激な変化は、認知症そのものが悪化したのではなく、別の原因が隠れているサインかもしれません。原因を正しく理解し、適切に対処することで、症状が改善する可能性は十分にあります。この記事では、認知症が一気に進むと考えられる原因と、ご家族ができる具体的な対処法を分かりやすく解説します。

「認知症が一気に進んだ」と感じる状態とは?

ご家族の様子が急に変わると、「認知症が悪化した」と焦ってしまいがちです。しかし、まずは落ち着いて、その状態が何を意味するのかを知ることが大切になります。

認知症の進行は本来ゆるやか

アルツハイマー型認知症をはじめ、多くの認知症は、数年という長い年月をかけてゆっくりと進行していくのが一般的です。昨日と今日で、まるで別人のように症状が悪化するということは、実はあまりありません。「急に進んだ」と感じる背景には、認知症の進行とは異なる、何か別の要因が影響していると考えた方が自然なのです。

急な悪化は「せん妄」や他の要因が隠れているサイン

もしご家族の症状が急に悪化したのであれば、それは「せん妄」という状態や、体調不良、環境の変化などが原因である可能性が高いです。これらは、原因を取り除くことで症状が改善することが多くあります。つまり、急な変化は、ご家族からの「なにか普段と違うことが起きている」というSOSサインでもあるのです。冷静に原因を探ることが、適切なケアへの第一歩となります。

認知症の症状が急激に悪化する4つの主な原因

では、具体的にどのような原因が考えられるのでしょうか。ここでは、認知症の症状が急激に悪化したように見える、代表的な4つの原因をご紹介します。ご家族の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。

【原因1】身体的な変化や病気

ご本人がうまく伝えられない体の不調が、脳の働きに影響し、認知症の症状を悪化させることがあります。特に高齢の方は、複数の不調を抱えていることも少なくありません。

感染症(肺炎・尿路感染症など)

高齢になると免疫力が低下し、肺炎や尿路感染症などにかかりやすくなります。発熱や咳といった分かりやすい症状が出ないことも多く、気づかないうちに体内で炎症が進んでいる場合があります。この炎症が脳に影響を与え、急に混乱したり、元気がなくなったりするのです。

脱水や栄養不足

水分や食事を摂る量が減ると、脱水や栄養不足に陥りやすくなります。特に夏場だけでなく、暖房の効いた冬の室内でも脱水は起こりえます。体内の水分や栄養バランスが崩れると、脳の機能が低下し、意識がもうろうとしたり、せん妄を引き起こしたりする原因となります。

脳血管障害や頭部外傷

小さな脳梗塞や脳出血といった脳血管障害や、転倒による頭の打撲などが原因で、急に症状が悪化することもあります。手足のしびれや、ろれつが回らないといったサインが見られたら、すぐに医療機関を受診してください。ご本人が転んだことを忘れているケースもあるため注意が必要です。

便秘や身体的な痛み

「たかが便秘」と軽く考えてはいけません。お腹の不快感や、腰痛・関節痛などの身体的な痛みをうまく言葉で表現できず、そのストレスから不穏になったり、落ち着きがなくなったりすることがあります。表情が険しい、お腹を触るなどの仕草がないか観察してみましょう。

【原因2】環境の大きな変化

認知症の方は、環境の変化に適応することが苦手です。ささいな変化でも、大きな不安や混乱につながり、症状が悪化したように見えることがあります。

入院や施設への入所

入院や施設への入所は、生活環境が大きく変わるため、本人にとって非常に大きなストレスとなります。見慣れない場所、知らない人々に囲まれることで、不安や混乱が強まり、夜間に大声を出すなどの症状(せん妄)が現れやすくなります。

引っ越しや部屋の模様替え

住み慣れた自宅であっても、引っ越しや大がかりな模様替えは混乱の原因になります。トイレの場所が分からなくなったり、自分の部屋がどこか認識できなくなったりすることで、不安が強まってしまうのです。家具の配置を少し変えただけでも、影響が出ることがあります。

介護者の交代や家族の不在

いつもそばにいてくれる家族や介護者が変わることも、大きなストレス要因です。例えば、家族の旅行や入院、デイサービスの担当者が変わった、といった出来事がきっかけになることも。安心できる存在がいないことで、孤独感や不安が募り、症状の悪化につながります。

【原因3】心理的なストレス

目には見えない心の負担も、認知症の症状に大きく影響します。ご本人が感じている不安や悲しみを理解しようとすることが、とても大切です。

不安感や孤独感

一人で過ごす時間が長かったり、家族との会話が少なくなったりすると、強い孤独感や不安を感じやすくなります。特に、夕暮れ時になると「家に帰らなければ」と落ち着かなくなる「夕暮れ症候群」も、こうした心理的な要因が関係していると言われています。

周囲からの叱責や強い口調

失敗を強く責められたり、頭ごなしに否定されたりすると、ご本人は深く傷つき、自信を失ってしまいます。「また怒られるかもしれない」という恐怖心から、不安が強まり、混乱したり、逆に閉じこもってしまったりする原因になるのです。

活動量の低下による刺激不足

デイサービスに行くのをやめてしまったり、趣味の活動をしなくなったりして、一日中ぼーっと過ごす時間が増えると、脳への刺激が減少します。脳の機能は使わないと衰えてしまうため、このような刺激不足が、意欲の低下や認知機能の悪化を招くことがあります。

【原因4】服用している薬の影響

よかれと思って飲んでいる薬が、予期せず認知症の症状に影響を与えているケースもあります。特に、薬の種類が増えやすい高齢者は注意が必要です。

新しい薬の開始・変更

風邪薬や睡眠薬、痛み止めなど、新しく飲み始めた薬や、いつも飲んでいる薬の種類・量が変わったタイミングで、急に様子がおかしくなることがあります。薬の変更がなかったか、最近の処方を確認してみましょう。

薬の副作用

薬によっては、副作用として眠気やふらつき、注意力の低下などを引き起こすものがあります。これらの副作用が、認知機能の低下やせん妄のように見えることがあります。特に、複数の医療機関から多くの薬をもらっている場合は注意が必要です。

多剤服用(ポリファーマシー)

たくさんの種類の薬を飲む「多剤服用(ポリファーマシー)」の状態になると、薬同士が互いに影響し合い、予期せぬ副作用が出やすくなります。かかりつけ医や薬剤師に「お薬手帳」を見せて、服用している薬全体を管理してもらうことが重要です。

症状の悪化?それとも「せん妄」?見分けるためのポイント

急激な症状の変化があった場合、「せん妄」の可能性を考えることが重要です。「せん妄」とは、体の不調や薬、環境の変化などが原因で起こる一時的な意識の混乱状態のこと。原因を取り除けば改善する可能性が高いのが特徴です。認知症のゆるやかな進行とは異なり、下記のような特徴があります。

  • 発症が急激:数時間〜数日の単位で、急に症状が現れる。
  • 症状の変動:一日の中でも、比較的しっかりしている時間帯と、混乱している時間帯がある(特に夜間に悪化しやすい)。
  • 注意力の低下:話に集中できず、ぼんやりしていることが多い。
  • 幻覚や妄想:虫が見える(幻視)など、現実にはないものが見えたり、思い込みが激しくなったりする。

これらの特徴が見られたら、せん妄を疑い、早急に医師に相談しましょう。

家族ができることとは?症状が急に進んだ時の3ステップ対処法

ご家族の様子が急に変わった時、どうすればよいのでしょうか。焦らず、冷静に対応するための3つのステップをご紹介します。

ステップ1:まずは本人の様子を注意深く観察する

まずは慌てずに、ご本人の様子をよく観察しましょう。「いつから」「どんなふうに」「何がきっかけで」変わったのかを具体的にメモしておくと、後で医師に説明する際に非常に役立ちます。食事や水分の量、排便の状況、睡眠の状態、服用している薬などもあわせて記録しておきましょう。

ステップ2:かかりつけ医や専門医にすぐ相談する

自己判断で「様子を見よう」と考えるのは危険です。観察したメモを持って、すぐにかかりつけ医や認知症の専門医(もの忘れ外来、精神科など)に相談してください。急な変化の裏には、肺炎や脳梗受けなどの治療が必要な病気が隠れている可能性もあります。早めの受診が、ご本人の心と体を守ることにつながります。

ステップ3:本人が安心できる環境を整える

医師の診察を待つ間も、ご家族ができることはあります。それは、ご本人が安心できる環境を作ってあげることです。部屋の照明を明るくしたり、テレビの音量を下げて静かな環境にしたりするだけでも効果的です。優しく声をかけ、手を握るなどのスキンシップも、ご本人の不安を和らげるのに役立ちます。

日頃から心がけたい本人への接し方

急な症状の悪化を防ぎ、穏やかな毎日を過ごしてもらうためには、日頃からの接し方がとても大切です。以下の3つのポイントを意識してみてください。

話を否定せず、まずは受け止める

ご本人が事実と違うことを言ったとしても、「違うでしょ!」と頭ごなしに否定するのは避けましょう。まずは「そうなんだね」「そう感じているんだね」と、一度その気持ちを受け止めてあげることが大切です。共感的な態度は、ご本人の安心感につながり、混乱を和らげます。

穏やかな口調で、ゆっくり話す

大きな声や早口は、ご本人を驚かせ、不安にさせてしまいます。話しかけるときは、相手の目線に合わせて、穏やかな表情と口調で、ゆっくりと話すことを心がけましょう。言葉だけでなく、優しい態度そのものが、ご本人にとって何よりの安心材料になるのです。

プライドを傷つけない言葉選びを

認知症になっても、プライドや自尊心は残っています。「どうしてこんなこともできないの?」といった言葉は、ご本人を深く傷つけます。代わりに「難しいところは一緒にやろうか」「手伝うよ」など、相手の気持ちを尊重した言葉を選ぶことで、良好な関係を築くことができます。

ひとりで抱え込まないで。認知症の相談窓口一覧

ご家族だけで介護の悩みを抱え込む必要はありません。専門家や同じ悩みを持つ仲間とつながることで、心身の負担を軽くすることができます。以下のような相談窓口をぜひ活用してください。

  • 地域包括支援センター:お住まいの地域にある高齢者の総合相談窓口です。介護保険サービスの利用など、さまざまな相談に乗ってくれます。
  • かかりつけ医、もの忘れ外来:医学的なアドバイスや、専門医療機関の紹介をしてくれます。
  • 認知症疾患医療センター:認知症の専門的な診断や治療、相談を行っている医療機関です。
  • 認知症の人と家族の会:同じ立場の家族と情報交換をしたり、悩みを分かち合ったりできる場です。

まとめ:急な変化は原因特定のサイン。早めの相談で適切なケアを

「認知症が一気に進んだ」と感じる急激な変化は、ご家族にとって非常にショッキングな出来事です。しかし、それは決して絶望的な状況ではありません。むしろ、その変化は、体調不良や環境の変化といった「対処可能な原因」が隠れていることを知らせる重要なサインなのです。ご家族がそのサインに気づき、注意深く観察し、そして早めに専門家へ相談することが、ご本人の苦痛を取り除き、穏やかな生活を取り戻すための鍵となります。一人で抱え込まず、専門家の力を借りながら、適切なケアへとつなげていきましょう。